e7 タイ パンガン島  リトリート 瞑想修行

はじめての方は「e1 タイ1 スコータイ マハタート寺 ぶよぶよとした世界」からどうぞ

「e6 スリランカ ポロンナルワ2 トゥクトゥクが連れて行った場所 孔雀と雉 象 牛」のつづき

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 あたたかい遠浅の海は、

どこまで歩いて行っても、

ひざより深くならず、

やわらかい藻が足にからみついた。

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「だから、人が来ないんだよ」

 バンガローを経営しているおばさんが、

砂浜から言った。


 人が来なくて波の音がしない海は

瞑想修行に良い。


 パンガン島はヒッピーの島として有名だが、

ヒッピーは波が高く、

パーティーが行われる東のビーチに集まる。


 浅く波が無く、

泳ぐことができない西の宿には、

ゆっくり読書するような

年配の欧米人しか来なかった。


「ここは何も無いけど、

ゆっくりするにはいい所だよ」

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 椰子の木が茂る海沿いの敷地内に、

二メートル四方の小さなバンガローが、

十個くらい点在していた。


 私は、この小さなバンガローで

リトリートすることにした。

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 部屋は隙間だらけで

いつも蚊が飛び回っていたが、

風通しが悪く暑かった。


 日が暮れると、

小さな暗い電球が一つあるだけなので、

字が読めなくなった。


 毎晩、薄闇の中で波の音を聞くことなく聞き、

夢の中へ入っていった。

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 朝日が昇ると、

私は、数珠と経典を持って、

小さな砂浜に座った。


 椰子の木陰で一日中、観想の海に浸った。

 
太陽は、刻一刻と位置を変え、

気が付くと彼の肌を焼いていた。


 一座終えるごとに、

私は、動きまわる木陰の中へ

移動しなければならなかった。

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 太陽が真上に昇ったころ、

私は立ち上がり、母屋へ歩いていく。


 おばさんは、

面倒臭そうにチャーハンを炒めながら、

振り向かずに言った。


「チャーハンね」


 おばさんはなぜだか、

私の昼食はいつもチャーハンである、と決めていた。


 低温で炒められたチャーハンは、

いつものように油ぎっていた。

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 砂浜に歩いて行く。


 鮮やかな蜜柑色のイグアナが、

私のために素早く場所を空けた。


 砂浜から眺める海は、

どこまでも深い青だった。


 太陽の日差しを受け、

小さな波がきらきらと輝いていた。

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 太陽が傾き、

椰子が木陰をつくらなくなった頃、

私は、いつしか、独りになっていた。


 小さな砂浜に、

椰子と、青い海と、赤い太陽と共に、

私は、独りであった。


 そこは、場所全体の中心であった。


 一人でいることが、

独りであることなのではない。


 大衆の中にあって独りであることは、

まったく可能なのである。


 ひとかけらの思考も無く、

観察しているものも、

観察されているものも無く、

ただ、独りになったとき、

ある神聖さが世界を内蔵していることを知る。


 太陽が残していった色彩が色褪せてゆき、

月の輪郭がはっきりしてくるまで、

私は、砂の上に座っていた。



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「e8 インド エローラ1 カイラーサナータ寺院の女神」につづく

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